図書館なんかに行かない。

図書館・情報学に日々触れていると,周囲に集まる人たちも自然と図書館・情報学に関係する人たちが多くなります。

先日,図書館と疎遠な業界の人たちにお会いする機会があったのですが,ほとんどの人(同席した10人程度すべて)が,「図書は本屋かアマゾンで買う」,「図書館なんかには行かない」,「今,言われて図書館を思い出した」というのです。

「あぁ,そうなんだなぁ」,「図書館“なんか”・・・行かないんだよなぁ」と思いました。

そういえば,以前,前職の方々(十数人)にお会いした際にも,同じようなことを言われたような気がします。たしか,定期的に図書館に行くのは,1人くらいだったような。。

図書館に関連する業界で働く人たちにとって,これらの言葉は非常に重いものです。よく比喩で使われる「茹でガエル(蛙)」にならないように,利用者の声に耳を傾け,危機感を持ってことにあたらなければなりません。

たしかデータ上は,公共図書館の利用者は年々増えているようですが,それらの数字(データ)と日頃の経験(周囲から見聞きすること)が一致しないことに違和感を感じます。こうした違和感,あるいは不安感はだいたいあたるので怖いです。私の周囲に,たまたま「図書館なんかに行かない」人たちが集まったのであれば,よいのですが。

顧客の声と行動と無形価値の創出。

NHKの「経済羅針盤(本日最終回)」に日本マクドナルド社長の原田泳幸さんがでていました。

原田さんは,私が好きな経営者のひとりです。その徹底した経営は経営界で有名になっています。どれほど徹底した人かということは,たとえば,「ゴルフのスコアを短期間で上げようとして,必死に練習をしたら疲労骨折をした」というほどです。そして,原田さんは日本マクドナルドの過去最高益を達成しています。

さて,番組で原田さんは,

「顧客がいうことと,実際にやっていることにはギャップがある」とおっしゃっていました。

たとえば,「サラダが欲しい。健康志向の商品が欲しい」といっておきながら,「実際にはビーフをたくさん入ったものをたべる」とのことです。企業は,企業価値を高めるために,顧客の要求に応えないといけません。しかも,潜在的な要求(ニーズ)に応えることが大切とのことでした。

つまり,よく「顧客の声に耳を傾けなさい」ということがいわれますが,それは,「顧客の潜在的な要求(ニーズ)に着目しなさい」ということです。

「潜在的な要求(ニーズ)に着目し,顧客の期待を超える価値を創出し,需要を掘り起こしたこと」の結果が,現在の日本マクドナルドなのだと思います。

日本マクドナルドは,過去5年間,世の中が単価を上げる中で,単価を下げる商品(100円バーガーや120円コーヒー)を出しています。

そして,今,世界同時不況において世の中が単価を下げる中で,単価を上げる商品(Quarter Pounder:セットで800円くらい)を打ち出しています。

原田さんは,「価格を考える前に,(顧客にとっての)価値を考えなければなりません」とおっしゃっていました。しかも,予算などが厳しい環境下においては,「無形の価値(利便性,サービス,信頼など)」を考えなければならないとのことでした。

よく,経営の現場にいると,特に飽和した市場において「打つ手がない」という状況になることがあります。そのときに私たちが考えるべきことは,「本当に,顧客の潜在的な要求(ニーズ)をみようとしていたのか」,しかも,「無形の価値をみようとしてきたのか」ということだと思います。

特に「無形の価値」は,予算が少なくとも,社員(あるいは職員)の知恵を働かせることで創出することができます。基本的に予算が厳しくなるといわれている図書館においても知恵を働かせることはできるのでは,ないでしょうか。

では,潜在的な要求への着目の仕方は,どうすればよいのか。

これについては,どこかで別途,ご説明したいと思っています。

図書館の競合と潜在利用者。

有料自習室の利用者の声に,「粘れる喫茶店がなくなっています。図書館は混んでいて夜は早めに閉鎖するし,家でも家族に遠慮したりテレビなどの誘惑が多かったりで集中できない」(「有料自習室,なぜ増える」日本経済新聞:2009年3月1日朝刊)というものがありました。最近,有料自習室が増加しているとのことです。

それでは,公立図書館で自習室を大量に提供すればよいかといえば,単純にそういう話でもありません。公立図書館には,公立図書館の経営理念や経営目標があって,それに基づいたバランスのよいサービスを提供する必要があるわけです。

ただ,ここでのポイントは,(当然のことかもしれませんが)利用者が勉強をしようとしたときに,図書館が有料自習室と並んだ選択肢のひとつに入っていたということです。勉強をする場を提供するサービスについて,いくつか選択肢が利用者にあることから,喫茶店や有料自習室が図書館の競合となっていることがわかります。このときに,図書館や企業がこのサービスを意図しているか,意図していないかは関係ありません(例えば,勉強することを望んでいない喫茶店も多いわけです)。

図書館のどのサービスに利用者がどれだけの期待をしているのか。

利用者が図書館に期待している各サービスの市場規模がどれだけあって,そのうちどれだけの利用者に対して,自分たちのサービスを利用してもらいたいのか。また,逆に,どれだけの利用者を取りこぼしているのか。自分たちが利用して欲しいサービスに限らず,利用者が図書館に期待しているサービスには何があるのか。また,そのサービスが図書館にないなら,その利用者は他の民間企業のどのようなサービスを利用しているのか。

意図しないサービスを提供はする必要は全くありませんが,少なくとも,このように市場(利用者の状況)を図書館が常に把握し続けていることは,非常に重要なことだと思います。(市場を理解した上で,サービスを提供しないという判断をしている状況をつくるのが大切ということです)

「異業種格闘技」と言われる現代の経営です。

このように市場を把握し続けていることは,図書館の価値を急激に低下させる競合が現れることを早めに察知できるなどのメリットもあるでしょう。

市場の把握の仕方については,また,別の機会に書きたいと思います。

レビットのねじの穴。

“昨年度,4分の1インチのドリルが100万個販売できたのは,顧客が「4分の1インチのドリル」を欲したからではなく,「4分の1インチの穴」を欲したからである。”

と述べたのは,Theodore Levitt(セオドア・レビット)である。このたとえ話は,マーケティングでよく使われているものです。

図書館に限らず世の中を見わたしてみると,顧客のためといって無駄に作られたサービスが多い。

利用者は,図書館に何を求めているのか?あるいは,利用者が図書館に求めているもので,私たちが気がついていないものはないのか?そういったことを,もう一度考え直す必要もあるんだろうなぁ,と思わされる言葉です。

マーケティングを学んでいると,よく,「顧客に密着せよ」,「顧客を第一に考えろ」などと言われますが,一般的に,こういったことを言われても,具体的な業務に落とし込む際に,どう考えて良いかわからなくなってしまうわけです。「レビットのねじの穴」が私たちに教えてくれることは,あまり複雑に考えずに,「顧客の立場になって考える(自分が顧客だったらどう思うのか)」という,極めて単純だけれども,もっとも大切なことです。

純粋に利用者の視点に立ち戻って,図書館のサービスを考え直してみると,もしかしたら新しいサービスが見つかるかもしれませんね。

ふと,思い出したので,備忘録として。