選書(大学図書館)

昨日,大学図書館員の方たちと一緒に選書について検討する機会がありました。あらためて,(心から)図書館における選書の重要性を認識しました。その重要性は,経済環境が悪化している今,特に高まっているように思います。

(1)  増加することのない予算(むしろ,縮小の圧力)
(2)  高騰する電子ジャーナルの価格
(3)  (2)のために圧迫される図書予算
(4) 利用者からの図書に対するさまざまな要望
(5) 選書担当者の頻繁な異動(ノウハウの消失)
(6) 現在の状況に適合しない選書方針・基準,などなど

図書を購入できる予算が減少すれば,必然的に購入できる図書の件数も少なくなるわけです。

かつて,10冊中9冊を選択し,購入できていたものが,1冊しか選択できなくなった場合に,どのように図書を選択すればよいのか。9冊を選べるときと,1冊しか選べないときでは,選書の仕方についても明らかに異なります。

図書を購入するという行為は,図書館の中で,継続的に行なわなければならない,待ったなしの業務です。

そのときどきの「経済・市場環境」,「利用者」,長期的に守っていくべき「図書館の経営理念」などをバランス良く考えながら,図書館員として「いま,この瞬間にどの図書を購入すべきなのか」ということを決めなければならないわけです。

高度な知識と経験が必要な専門的な業務であることに,間違いはないでしょう。

研究者としても,図書館員の方々と一緒になって,この問題について一生懸命に考えなければならないことだと思います。

図書館員の方々を心から応援しています。何かあれば,いつでもご連絡ください。

レビットのねじの穴。

“昨年度,4分の1インチのドリルが100万個販売できたのは,顧客が「4分の1インチのドリル」を欲したからではなく,「4分の1インチの穴」を欲したからである。”

と述べたのは,Theodore Levitt(セオドア・レビット)である。このたとえ話は,マーケティングでよく使われているものです。

図書館に限らず世の中を見わたしてみると,顧客のためといって無駄に作られたサービスが多い。

利用者は,図書館に何を求めているのか?あるいは,利用者が図書館に求めているもので,私たちが気がついていないものはないのか?そういったことを,もう一度考え直す必要もあるんだろうなぁ,と思わされる言葉です。

マーケティングを学んでいると,よく,「顧客に密着せよ」,「顧客を第一に考えろ」などと言われますが,一般的に,こういったことを言われても,具体的な業務に落とし込む際に,どう考えて良いかわからなくなってしまうわけです。「レビットのねじの穴」が私たちに教えてくれることは,あまり複雑に考えずに,「顧客の立場になって考える(自分が顧客だったらどう思うのか)」という,極めて単純だけれども,もっとも大切なことです。

純粋に利用者の視点に立ち戻って,図書館のサービスを考え直してみると,もしかしたら新しいサービスが見つかるかもしれませんね。

ふと,思い出したので,備忘録として。

コスト減,安全管理に陰

このようなタイトルの記事が,2月23日の日経新聞に掲載されていました。神奈川県と契約先のIBMが,コストを最優先するために,サービス品質の低下(個人情報の流出)を招いたことを取り上げています。

記事には書かれていませんが,ここでの議論のポイントは,資金が不足している厳しい環境下において,「コストの削減」と「品質の維持・向上」のどちらを優先させるのか,ということだと思います。品質では一流のサービスを提供すると考えられているIBMでさえ,コストと品質のジレンマに追い込まれていたことは,この問題が一筋縄ではいかないことを改めて認識させられる結果になりました。

ここからの学びは,組織の果たすべき理念を忘れずに,「品質を向上させること」に徹することができる強い組織を創ることの大切さ,なのだと思います。

チャレンジングな目標ではありますが,「品質の向上」を基礎に,あらゆる点を見直すことで結果的に「コスト」が下がる,という循環になるために知恵を絞ること。

組織のメンバーが知恵を絞る中で出てきた解は,結果的にイノベーションに繋がるのだと思います。イノベーションは,民間でのみ起こるものではありません。政府や非営利組織としても,経営努力を怠らずに,何が品質向上に繋がるのかを必死に考える必要があるのでしょう。

厳しい環境下で知恵を絞って生き延びてきた戦後の日本企業の中に,いくつかの答えが眠っているような気もしています。

「すでに起こった未来」と将来に向けた「経営の準備」

2005年にこの世を去ったドラッカーは,未来に向けた経営の舵取りをする際に,「すでに起こった未来」を現代に見つけることで,経営資源をどこに投じるかを決定することを述べています。

第一次産業革命(18世紀後半~19世紀)は,1769年にワットの蒸気機関に始まる「動力革命」でした。

第二次産業革命(20世紀)は,1903年以降のT型フォードに始まる自動車などを支える「エネルギー(石油・電気)革命」でした。

第三次産業革命(20世紀後半~21世紀)は,1990年代に普及しだしたインターネットに始まる「IT・情報革命」です。

このように考えると私たちは,今,第三次産業革命の勃興期にいることが分かります。これから,予想をすることができないないような変化が訪れることになるかもしれません。ただ,私が考えるのは,「図書館・情報学」で考えられていることの中に,「すでに起こった未来」がいくつか含まれているのではないか,ということです。

「情報」と名のつく学問は,いくつかありますが,「図書館・情報学」のように「情報」について昔からしっかりと積み重ねてきた学問は他に見ないように思います。これからが「図書館・情報学」の時代となるだろうときに,その中心となる素質を備えている図書館は,自ら積極的に行動を起こす必要があります。そうしなければ,別の誰か(機関)がその役割を担うことになるでしょう。そして,積極的な行動を起こす必要のある図書館の舵取りを行う図書館経営者たちは,将来に向けた「経営の準備」をする必要があるでしょう。もし,次の100年が「図書館・情報学」の時代にならなかったとすれば,それは経営が失敗したということになってしまうことは否めません。

これは,自分も含めて,肝に銘じて経営活動を行っていかなければならないことだと思っています。

追い風は吹いています。

ブログ設置の目的。

無事に修士論文を提出いたしましたので,まじめに図書館経営について考えていきたいと思います。

このブログの目的は,「図書館の現場の人が自らの業務やその意思決定に生かすことのできるような情報あるいはメッセージを発信することで,少しでも図書館の方々のお役に立つこと」です。ここでお伝えする情報やメッセージの内容は,特に図書館経営に限定しません。図書館経営の現場に生かせる話であれば,幅広く取り上げていきたいと思います。

また,ご意見がある方は,koizumi[at]slis[dot]keio[dot]ac[dot]jpまでよろしくお願いいたします。

もし,このブログを見つけてくれた方がいらっしゃったら,一緒に図書館経営について考えて参りましょう。