「中途採用で雇用された民間企業出身の図書館員」や「経営コンサルタント」

最近,特に大学図書館において,民間企業出身の方の中途採用や外部のコンサルタントを雇用するケースが多く見られるようになってきたように思います。外部の経営コンサルタントなどは,大学の経営改革の絡みで,大学から送り込まれているケースが多いようです。つまり,生え抜きの図書館職員(あるいは大学職員)のみで経営や業務上の意思決定をする機会が減っているということです。

その際に,図書館の経営層の方々は,彼らをマネジメントする際に気をつけた方がよいことがあります。(これは私の経験に基づく個人的な見解です)

■「中途採用で雇用された民間企業出身の図書館員」が陥りやすいこと
・別の組織からやってきたので,自分がこれまでいた組織と違うところが目につくことが多いです
・中途採用だから早く実績を作りたくてがんばってしまう。つまり,図書館にとってよいことであるとは限らないにも関わらず,目についたところから図書館業務や組織などを改変してしまうことになります
→結果的に,図書館のよいところまで改変してしまい,図書館のよいところが失われてしまうリスクがあります

□(対処法)
すぐに管理職にするのではなく,まずは図書館の理念・文化・歴史・業務をしっかりと学んでもらうことを優先してもらったほうがよいでしょう。また,すぐに実績を求めない方がよいでしょう。

■「経営コンサルタント」が陥りやすいこと
ゼロベース思考(コンサル用語)で考えようとします
・経費・効率,あるいは目に見えるファクト(コンサル用語:事実)という観点のみから考える傾向があります
・ファクトを集めるための細かい調査票を何枚も書かされることになります
・(図書館員の方たちが論理的思考への備えが充分でない場合)ファクトと論理でどんどん説明するので,彼らのいう結論が直感的に間違えていると思っても,反論することができない状況に図書館員が追い込まれます
→結果的に,図書館のよいところまで改変してしまい,図書館のよいところが失われてしまうリスクがあります。しかも,図書館員の方たちが日常業務をする時間も大幅に減り,日常業務に支障が出る場合があります。

□(対処法)
1)日常業務を優先的にできることが重要であること,2)ゼロベースで考えすぎずに図書館の文化や歴史も含めて考えて欲しいこと,3)ファクトと論理だけではなく図書館員たちの直感もくみ取って欲しいこと,を熱心に伝えるのがよいでしょう。

 ひとつ,断っておきますが,いずれも彼らが悪いわけではありません。(むしろ,新しい発見を与えてくれることのほうが多いでしょう)

 おそらく,一生懸命に働こうとしているからこそ,上記で列挙したようなことを行なってしまうのでしょう。その結果,残念ながら図書館のよいものが失われてしまう可能性が高まるわけです。

 ですから,図書館の経営層はその辺を考慮に入れて,マネジメントすることで,彼らのよいところを引き出してあげるのがよいのだと思います。

 ただし,いずれの場合も図書館経営者にマネジメント・スキルがないと困ったことになってしまうので,図書館経営者も日頃からマネジメント・スキルの向上が求められるのはいうまでもありません。

アメリカの図書館経営における経営戦略論:1960年代から2000年代

更新が滞ってました。

昨日,日本図書館情報学会春季研究集会で発表いたしました。

発表の題目は「アメリカの図書館経営における経営戦略論:1960年代から2000年代」です。

発表後,何人かの方から熱心な質問を頂きました。図書館経営の研究者が少ないので,学問領域として発展・確立していくためにも,図書館経営に関心を寄せてくれる方がひとりでも増えればいいと思っています。

顧客の期待を超えた別世界の品質。

先日,知人に連れられて,栃木県の山奥まで蕎麦を食べに行きました。蕎麦好きの間では噂になっているお店のようで,食べてみると本当に美味しく感動的な蕎麦でした。(価格はやや高めです)

ただ,それ以上に驚いたのは,もう少し行けば道が無くなってしまうような山奥にも関わらず,午前からお店が混雑(50分待ち)していたことでした。お店のお兄さんに聞くと,平日でもこれくらいの混雑ぶりで,並ばずに入れるようになるのは夕方の4時くらいだとか。

世の中のマーケターたちが,商品を売るために睡眠時間を削って働いても働いても働いても売れない世界とは,まったくの別のところにこのような世界が広がっているとは,本当に驚きです。近年,マーケティングが大事,広報が大事とは,よく言われますが,経営にとってもっとも大切なものを見せつけられたような気がしました。

ついでに。

これに,似たような話で,「プロダクトライフサイクルを超えた品質を提供する」というものがあります。有名な話として,「スイスの機械式時計と日本のデジタル時計」などが,よく例にあげられています。(たしか,4月の日経新聞にもこの例が出されていました)

機械仕掛けのスイス時計は,日本が機械仕掛けの時計をデジタル化・大量生産したことで,駆逐されると考えられていました。つまり,機械式時計は衰退期に入り,デジタル時計が成長期に入ると考えられていたわけです。

しかし,ふたを開けてみると,たしかに一部の機械仕掛けの時計はデジタル時計に置き換えられましたが,スイスの時計はその品質の高さから,今なお高価格で売れ続けています。つまり,スイスの機械仕掛けの時計は,その品質にこだわり続けることで,プロダクトライフサイクルを超えた別世界で生き続けているのです。(一方,日本勢はデジタル時計の価格競争に巻き込まれて困っています)

図書館にとっては,紙媒体の資料が電子媒体の資料に置き換わることが,プロダクトライフサイクルと関係してきます。もちろん,図書館が自ら資料を作るわけではありませんが,このことは強く意識をしておいた方がよいでしょう。

(資料提供ありきではなく)図書館が利用者に提供すべきものは何なのか。そして,利用者が図書館に本当に期待しているものは何なのか。それをもう一度,考え直すことは図書館の未来を明るくすることのように思います。

山奥の蕎麦屋とスイス製機械式時計。

商品やサービスの形態は違っても,このふたつに図書館が並べたら素敵ですね。