「図書館/委託企業」と「図書館の組織」という観点

ゼミの大先輩であるHさんのお誘いで勉強会に参加してきました。
そこにいらっしゃったのは,数名の図書館員の方と数名の業務委託先企業の社員の方でした。

そこで(あらためて)興味深いと思ったのは,図書館といっても,そこで働く職員の所属先を考えるとそれがまったくバラバラなことです。具体的にいえば,利用者として図書館の窓口に立っている人に話しかけた際に,その人が業務委託先A社の社員であり,カウンターの奧の事務室に見える黙々と目録を作成している人は業務委託先B社の社員であるという状況が,多くの図書館で起きているわけです。大きな図書館であれば,数社の業務委託先と契約していることはよくあることですから,それこそ働く職員の所属先は様々になります。もちろん,それが悪いといっているわけではありません。

大事なことは,図書館の組織を考える際に,図書館(正規職員)や委託先企業(非正規職員)と考えるのか,また,それらをひとまとまりの組織と考えるのか,で大きな違いがでてくるということです。

現実的に,民間企業と同様に,図書館(正規職員)だけで完結し続ける組織の状況はありえないのだと思います。また,個人の能力だけをみれば,(経験による知識の差はあるかもしれませんが)正規職員も,非正規職員もそれほど大きな差はない可能性は高いです。

図書館(正規職員)はこっち側で,委託先企業(非正規職員)はあっち側と考えるのではなく,図書館で志を共にしていっしょに働く職員(チーム),また,それらをひとまとまりの組織と考えて,現在はもちろん,未来の図書館について考えていった方が生産的なように思いました。

その中で,図書館経営者は図書館の大事なものを失わない,むしろ,それを増すような舵取りをする。

図書館経営者が,図書館経営における「経営組織」を考える際には,確実に「所属先」ではなく,「ひとつの組織」という観点からみているような気がします。

人材育成と組織の成長

本日(6/25)の日本経済新聞の朝刊(11面)に「トヨタを変える:新体制始動」という記事がありました。小さな見出しに,“雇用維持のハードル”とあります。内容は,「世界経済後退の影響で売上が減少し,生産量を縮小する必要がある状況下で,雇用維持が課題になる」というものでした。社員を人財(人と財産と考えるために“人財”)といって,雇用を維持し続けてきた日本企業(今回の特集はトヨタ)にとって,雇用は聖域とされていました。それが,難しくなってきている状況が描かれています。

なぜ,今,トヨタの「雇用維持」が注目されているのかといえば,それは,過去10年以上にわたる売上拡大・組織拡大を続けてきたトヨタが久しぶりに縮小の段階に入ったからです。

この記事と関連して,組織におけるひとつのキーセンテンスをご紹介しておきます。

それは,

「社員の幸せ(特に人材育成という観点から)を実現するためには,組織は拡大し続ける宿命にある」

というものです。

組織が市場に対して価値を提供するためには,価値を提供できる人を育成し続けなくてはなりません。一般に,人は仕事で成長するといわれていますから,教育だけを施しても市場に価値を提供できる人は育ちません(研修は受けてみたけれど,1週間もしたら忘れてしまうのは仕事が与えられないからです)。市場に高い価値を提供できる人を育成するためには,どんどん大きな,あるいは難しい仕事を与え続ける必要があります。大きな仕事には権限が必要ですから,大きな仕事を与え続けようとしたら,一般的には,昇進させ続ける必要があります。つまり,人は成長するためには,昇進をする必要があるわけです。

ここで問題になるのは,一般的な組織はピラミッド構造になっていますので,社員の数よりも昇進先のポストが少ないということです。

そこに,組織が拡大し続ける宿命があります。

人材育成をしようと考えれば,組織は拡大し続け,ポストを創り続けなければならないわけです。

なかなか売上・利益を拡大し,組織を拡大することができない組織は,全体的に昇進を遅らせたり,課長の下に課長補佐や係長などの肩書きを作ってみたりするわけです。しかし,それは本質的な解決策ではありません。

経営者は,常に組織を拡大させ続けることに使命を感じる必要があります。

翻って,図書館はどうでしょうか。図書館における組織の拡大も,利用者にこれまで以上に高い価値を提供しつづけること以外にないと思います。

このことを体験的に感じながらも,これまで以上に高い価値をなかなか提供できない,あるいは価値を提供したとしても,その成果をうまく示すことができないというジレンマを抱えていらっしゃる図書館のマネジメント層の方も多いと思います。

ですから,ぜひ,そのような図書館員の方々といっしょになって,職員の方々がいきいきと働き,自己の成長を実現していく図書館,またそれを創造する図書館経営を考えていくことができたらと思っているわけです。